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“コーヒースタンド”の先駆者として、代々木公園に新しい風景をつくり出す。「Little Nap COFFEE」オーナー・濱田大介さん【いま、これから、代々木上原 vol.5】

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ネガティブな状況に陥った時に、自身を突き動かすのは「好き」のチカラ。

「好き」を仕事にしている人たちが、さまざまな状況を踏まえて「いま、今まで、少し先の未来」を、どのように考えているのか?

代々木上原という地で、未来を見つめる人たちにフォーカスしていく新連載【いま、これから、代々木上原】。

第5回は、代々木公園の目と鼻の先にある小さなコーヒースタンドLittle Nap COFFEE STAND(リトルナップコーヒースタンド)と、富ヶ谷の井の頭通り沿いでコーヒーを煎るいい香りが漂うコーヒーショップLittle Nap COFFEE ROASTERS(リトルナップ コーヒーロースターズ)の2店を運営する、「Little Nap COFFEE」のオーナー・濱田大介さんにお話を伺います。

代々木公園エリアを代表するコーヒーブランド「Little Nap 」の世界には、美味いコーヒーと、心地よい音楽やチルアウトできる空間があり、代々木公園を訪れる人たちや近隣の住民の方だけでなく、名だたるミュージシャン達の憩いの場になっているという噂も。

カフェよりもコンパクトで、気軽に立ち寄ったりテイクアウトできる“コーヒースタンド”の先駆者として、代々木公園エリアに新しい風景をつくり出しています。

そんな濱田さん流コーヒーカルチャーの育て方や、街との関わりを追求してみました。

バリスタの立ち振る舞いに、一目惚れ

――濱田さんが、バリスタになったきっかけは何だったのでしょうか?

20代前半の頃、イタリア全土を旅して巡っていて、バリスタ文化に触れたのがきっかけです。当時の日本には今ほどエスプレッソがまだ普及していなかったのですが、イタリアでは古くから“バリスタ”という職人が確立していました。

コーヒーを淹れるだけがバリスタの仕事ではない。お酒を作りアンティパスト(前菜)もサーブするし、お客さんとのコニュニケーションも上手にこなす、まさにサービスマン。バリスタによってコーヒーの味も違い、シェフのように個性を発揮して、チップ制度で高く評価される。そんなバリスタの立ち振る舞いが、すごくカッコよかったんです。

それから帰国して、イタリアからエスプレッソマシンやコーヒー豆を輸入する商社で働きながら、本格的にバリスタの仕事を始めました。当時はエスプレッソを入れられる人も少なかったので、カフェやレストランにエスプレッソマシーンを納品するだけでなく、バリスタとしてコーヒーの淹れ方も教えていたんです。

その後26歳の時に独立して、新しい飲食店をプロデュースするかたわら、大きな倉庫をDIYで改装して、家具、古本、レコードなど自分が好きなものを集めたカフェを地元の富山にオープンしました。

社会や街と向き合って、知らなかったことや新しい価値観を伝えたい

――お店を経営しながら、世界中を旅して周りさまざまな文化に触れていたそうですが……。

いろんな街の空気を感じたり、日本では味わえないものを食べるのが好きだったんです。

生産者であるコーヒー農家の人たちの顔が、消費者までなかなか見えない“ブラックボックス”だった、当時のコーヒー産業に疑問を感じていたので、アフリカでコーヒー豆を手積みで収穫している様子を目にした時は衝撃的でした。

それから、先進国で沢山のコーヒーが消費されているけれど、なかなか生産国に充分な利益が還元されない仕組みが変われば面白いなと思って。もっと社会や街と向き合って、知らなかったことや新しい価値観をお客さんに伝える仕事がしたいと思うようになりました。

公園を、みんなの「庭」として楽しむ

――その後、富山のカフェをたたんで30歳になって再び東京に戻り、他店のプロデュースやバリスタ育成の仕事を経て、2011年にLittle Nap COFFEE STANDをオープンした濱田さん。東京という都会の中で、なぜ代々木公園の近くを立地に選んだのでしょうか?

世界中を巡ってみると、それなりの規模の都市には必ずといっていいほど大きな公園がある。そこで散歩したり寛いだり、地域の人たちにとって公園が庭になっていて、その周りにカフェやレストランなどいろんなお店があるんです。

公園で出会った人たちから「あそこに美味しいハンバーガー屋さんがあるよ!」と教えてもらって、行ってみたら近所の人たちが楽器を演奏していたり、思いがけない出会いと発見が転がっていた。そんな場所がとても魅力的に映って、代々木公園のそばにカフェというカテゴリーではなく、アトリエ兼売店として独りでも任せられる小さなお店をオープンしました。

実は、最初は周りの人たちからは「人通りが少ない」「物件が狭い」などと反対されていたんです。でも僕は、なるべくわかりづらい場所にあって近所の人たちがゆっくりと過ごせるお店にしたかったし、店内が狭くても目の前に広い公園があるから充分。市場調査をしたり既存の常識に従うよりも、自らの足で街を歩いてあれこれ想像力を働かせて決断したかったんです。


ふと深呼吸して、立ち止まれる場所

――Little Nap COFFEE STANDに続いて、さらに5年後、代々木公園から徒歩圏内の富ヶ谷にLittle Nap COFFEE ROASTERSをオープンしたのはなぜですか?

コーヒー豆を焙煎するマイクロロースターを置く場所として、Little Nap COFFEE STANDから近くにある3階建てのビルを一棟借りました。1階に焙煎所とコーヒーショップ、2,3階は秘密基地のようなプライベートに近いイベントスペースになっています。

基本的に僕のお店は、六本木・渋谷・原宿辺りで働いている人たちにとって、オフタイムの空間。仕事モードのスイッチをオンにして集中する時間だけでなく、心地よい音楽を聴いてコーヒーを飲みながらリラックスした状態でも、クリエイティブなアイデアが浮かんだりするもの。

お店を「Little Nap」=“うたた寝”と名付けたように、自然体でいられるワンシーンとして毎日通ってもらえる場所になっています。

ほんのちょっとしたコトでも、贅沢に感じる街

――代々木上原・公園エリアに2つのお店を構え、自身のお住まいもあるという濱田さんにとって、この街の魅力は何でしょうか?

都心だけどゆっくりしてる。やっぱり公園の存在も大きいですね。おいしいお酒が飲めていいお店があって、すれ違ったら「調子どうよ?」って挨拶を交わせて心許せる仲間がそばにいてくれる。そんなほんのちょっとしたコトでも贅沢に感じる街です。

ポートランドやブルックリンが好きな若い子たちに「何がいいの?」って聞くと、「街自体がクリエイティブで、持続可能な考え方をしているからカッコいい」って答えが返ってくるんですが、自分たちの街もそんな風に変えればいいと思う。

ブルックリンのように治安が悪かった場所も、ひとつのレストランやクラブが出来たことをきっかけに、どんどん街の景色が変わっていって、カルチャーが発展していくもの。代々木の街もそうなっているんじゃないかな。

お店に集ってくれる仲間達の存在

――Little Nap COFFEE STANDがオープンして間もなく東日本大震災を経験されたそうですが、当時のお店はどのような状況だったのでしょうか?

震災が起こったのは、2011年2月11日にお店をオープンしてからちょうど1ヶ月目の3月11日で、まさに日本が大きく変わる瞬間。お店はオープンしたばかりで、宣伝や告知もしなかったから忙しくなかったので、営業を継続できるのか不確かな状況でした。

でも、お店に集ってくれた仲間達の存在があった。朝からコーヒーを飲んで日常会話をしながら「何かやろう」とみんなで協力し合って、親しいミュージシャン達と被災地の福島を訪れてイベントをしたんです。そうやって、ローカルの仲間たちと熱い話をして自分たちの街づくりをするように、大変な状況にある他の町もサポートするようになった。すると東北だけでなく熊本や広島など全国に仲間たちが増えていく、自然とそういうお店になりました。

感染予防にも“ユーモア”を

――さらに、昨今ではコロナ禍になってしまいましたが、お店ではどんな対応や変化がありましたか?

感染予防の対策として、コンビニをはじめ多くのお店でペライチのビニールシートをかけるようになったけれど、僕はそれに“距離”を感じたんです。「どうして、たった1枚のビニールシートで距離を感じるんだろう?」と考えてみると、デザインが足りないことに気づきました。

ただでさえマスクを着用して相手の表情が分からないのに、ただのビニールをかけただけでは殺伐としていて不信感が高まってしまう。そんな状況には、まず“ユーモア”が必要だと思ったので、オシャレな飛沫防止のショーケースをいち早く作ったり、「優しさのディスタンス」と言う表現に変えたりしながら、お客さんに感染予防に協力してもらいました。

そうすると、お客さんも「何か変わったね」と楽しんでくれて。ぎゅっと心が引き込まれるような仕掛けがあると、街の景観もグッと色鮮やかになる。デザインが足りないとつまらなくなるし、デザインでいろいろなことがカバーできるんです。

震災やコロナ禍で世の中がガラリと変わってしまったけど、その中でいろんなことに気づく事もある。誰しもピンチになる節目は必ずあって、そこで何かを気づけるか気づけないかで、ピンチを乗り越えられるかどうか、その後の未来が違ってくるんじゃないかな。

知らないものに出会った瞬間、みんなときめく

――Little Nap COFFEEのオーナーである濱田さんが、大切にしている仕事のあり方を教えてください。

エスプレッソがなかなか認識されなかった時代にバリスタになって、日本ではまだ存在しなかったコーヒースタンドを代々木公園のそばに据えて、少しずつ認知されながら、今や至る所に他店も増えて普及していきました。

今までになかったものを作って、みんなが知らなかったことを伝えることは、とても面白いもの。なぜなら、知らないものに出会った瞬間に、みんなときめくから。

知らない世界のことを知っているというワクワク感と、知らないことを伝える仕事を、これからも楽しんでいきたいです。

世の中が変わっていくはじまりは、“心を揺さぶるアウトプット”

イタリアのバリスタの立ち振る舞いに一目惚れして自らバリスタになり、コーヒーを手にして代々木公園を庭のように楽しむカルチャーを定着させて、街の景色や人々の過ごし方を変える。

そんな濱田さんが、外国で体感したいくつかの“カッコいい”を日本に持ち帰って、それらを周りの仲間たちが共感し、ローカルの暮らしが“ときめく”ものに変換するプロセスは、まさに文化のカタチ。

街だけでなく世の中が変わっていく過程は、”心を揺さぶるアウトプット”から始まるのかもしれません。

Little Nap COFFEE STAND
住所:東京都渋谷区代々木5-65-4
TEL:03-3466-0074
営業時間:9:00~19:00
定休日:不定休

Little Nap COFFEE ROASTERS
住所:東京都渋谷区富ケ谷2-43-15
TEL:03-5738-8045
営業時間:9:00~19:00
定休日:不定休

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