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ベーグルを通して、日常の愛おしさに気づく。「テコナベーグルワークス」店長・小林千絵さん【いま、これから、代々木上原 vol.4】

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ネガティブな状況に陥った時に、自身を突き動かすのは「好き」のチカラ。

「好き」を仕事にしている人たちが、さまざまな状況を踏まえて「いま、今まで、少し先の未来」を、どのように考えているのか?

代々木上原という地で、未来を見つめる人たちにフォーカスしていく新連載【いま、これから、代々木上原】

第4回は、代々木公園・代々木八幡駅の商店街の片隅にあるマンションの地下1階にひっそりとお店を構えながら、いつも行列が絶えないベーグル専門店「テコナベーグルワークス」を切り盛りする、店長・小林千絵さんにお話を伺います。

小林さんは、ベーグル職人だけでなく、お店の情報発信から内装、経営まで、一人で何役もこなしながら、「テコナベーグルワークス」を人気店に成長させた敏腕店長。

パティシエとしてフランスや国内の洋菓子店で活躍していた小林さんが、ベーグル職人へ転身した理由や、多くの人を惹きつける「テコナベーグルワークス」の魅力を探ってみました。

テコナベーグルワークス 代々木上原 代々木八幡 小林智絵

ベーグルを日常の食卓に

――パティシエからベーグル職人に転身した理由を教えてください。

フランスや国内の洋菓子店で10年ぐらいパティシエをしていたのですが、30歳を過ぎてから人生にひと区切りつけたいと思っていた時に、まだ世の中に浸透していないベーグルに興味を持つようになったんです。家庭の食卓で、食パンの代わりにベーグルを食べるような日常になるためにはどうすればいいだろう、とずっと考えていました。

パティシエは、食材の知識はもちろんですが、フルーツを漬け込んだり素材を生かすための特殊な技術が必要な仕事。ベーグル作りには、これまで培ってきたパティシエの知識を活かせそうな気がしました。例えば、ひとつ食べただけで至福感が味わえるケーキと同じように、ベーグルも見た目も楽しめて、口の中に入れた時にカリカリっという食感や香りが伝わるように作ったら面白いと思ったんです。

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狭い空間で作るのが好き

――ベーグルを日常食にしたいと志した小林さんが、2010年から「テコナベーグルワークス」の店長になったきっかけは何だったのでしょうか?

都内のいろいろなお店をリサーチして、ここ「テコナベーグルワークス」を訪ねたんですが、店内がものすごく狭いのが印象的で。

私は、狭いところで作るのが大好きなんです。「このお店だったら楽しく働けそう」と直感が働き、スタッフ募集のお知らせは出ていなかったけれど、すぐにお店にメールして働きたいと志願したんです。タイミングよくオーナーも誰かにお店を任せたいと思っていた状況で、いきなり店長としてお店を切り盛りすることになりました。

代々木公園エリアは、美味しいものを正当にジャッジしてくれる街

――「テコナベーグルワークス」の店舗を構えている、代々木公園エリアの街について、どんな印象を持っていますか?

青山や六本木などとは違って、庶民感もありつつ上品な人が多いような気がします。それから興味があるものや欲しいものをアグレッシブに追求し、美味しいものに対して正当にジャッジしてくれる。外国人や年配の方も頻繁に買いに来てくれます。

春季は、オープン直後から若いカップルの方々が来店して、代々木公園でピクニックをしながら楽しそうにベーグルをSNSにあげてくれたりするので、この街にお店を構えていることの魅力を実感しています。

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経営は、ゲームのような面白さがある

――店長として、具体的にはどんな運営を行っているのでしょうか?

ベーグルのレシピ作りから製造だけでなく、Instagramなど SNSを活用した告知、お店の内装や経営まで、全て私が担当しています。職人としてだけでなく、経営面でも利益を追求しながら商売を考えていくことは、まるでゲームをやっているような面白さがあります。

自分が美味しいと思って作っても、売れなかったら自分のエゴでしかない。常にお客さんの気持ちに寄り沿いながらレシピを熟考して、一つひとつのベーグルを大事に作っていけば、必ずまた買いに来てくれると思っています。 製造する側にとっては1000個のベーグルでも、お客さんにとってはたった1個のベーグルですから。

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お客さんとベーグルは、 “一期一会”のような関係

――お客さんがリピートしてくれるように、何か工夫されていることはありますか?

ベーグルしか販売していませんが、たくさんの種類を作るようにしています。だいたい毎日60種類くらいは作っていて頻繁に新商品を出しているのですが、一度に沢山は買えないお客さんがほとんど。商品が売り場に出る時間もバラバラなので、今日買えたベーグルは明日には買えなかったりして、お客さんとベーグルは、まるで“一期一会”のような関係になっているんです。

そうすると「今日は買えなかったから、また次来よう」とか「今日はどんなベーグルが買えるんだろう?」というワクワク感が生まれてくるもの。「テコナベーグルワークス」のお客さんは、通りがかりというよりも、「今日はテコナでベーグルを買う」という目的意識をしっかり持って来てくださる方が多いんです。だからどんなベーグルを食べても、期待を裏切らず飽きないように、商品力を大事にしています。

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日常の食生活の中に、レシピ作りのヒントが転がっている

――新商品を開発するために、どのようにレシピのアイデアを考案されているのでしょうか?

休日にケーキを食べて「この食感と香りがいいな」とか、中華料理を食べながら「この食材や香辛料を入れてみようかな」とか、他店のベーグルやパンを研究するのではなく、日常の食生活の中に新しいレシピのヒントがたくさん転がっているんです。

さらに季節によって旬の食材を使ったり、同じ食材でも調理の仕方を変えたりすれば、レパートリーは無限大。レシピ作りで苦労したことはありません。

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“うちスタイル”をお客さんに示すこと

――世の中の状況や環境もなかなか読めない昨今、お店ではどのように対応していますか?

お店やお客さんにとってマイナスになってしまうことを決めた時は、その状況下で何ができるかを考えてベストな答えを出すようにしています。

最近では、新型コロナウイルス感染防止のため非常事態宣言が発令された時、店内にお客さんを入れないようにしようと決断した期間がありました。その状態で何ができるかを考えて、Instagramを活用しながら普段は載せないメニューを早めに告知して、買いたいベーグル名と個数をメモに取って来てもらって、お店の入り口でメモを見ながらベーグルを提供するというスタイルに変更したんです。

「マイパック制度」も、12年前のオープン当初から協力いただいているように、「当店はこうです」という“うちスタイル”を、押し付けるのではなく意図をしっかり示すと、お客さんは理解してくれるんだと思います。

――お客さんとは、どのような関係性を築いているのでしょうか?

挨拶くらいでお喋りしたことはないけれど、 対等で互いに信頼感がある不思議な関係です。お店の前に行列ができてしまっても「仕方ないから並ぼう」という暗黙の理解があったり、どんな味かわからない新商品を出しても迷うことなく買ってくださるんです。

時には、「コロナ禍でもお店を開けてくれてありがとう」とか「すごく美味しくて好きです」というファンレターを頂くこともあります。だから、「テコナベーグルワークス」を信頼してくださるお客さんを裏切ることがないように、美味しいベーグル作りと心地よいサービスを心がけています。

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いつも“ワクワク”できるお店を目指す

――これから展開していきたいことはありますか?

私が独りで出来ることは限られているので、これからはスタッフを育成することにも注力して、もっと間口の広いお店にしたいです。そうすれば営業日を増やしたり、新しいベーグルの試作会などイベントを開いたり、焼き菓子やドリンクなど新しいメニューも提供できる。

それから、もっと多くの人にベーグルを家庭で作って欲しいです。ベーグルはパン作りみたいに型が要らないので意外と簡単で楽しく作れてヘルシー。特別なものではなく日常の食卓メニューのひとつとして、ベーグルを沢山食べて頂きたいです。

「テコナベーグルワークス」を切り盛りしてから約10年が経ちますが、お店に出勤するのが嫌だなと思ったことは1日もなく、 やりたいことが次から次へと増えていくので、毎日のように出される宿題を解いている感覚で楽しく働いています。

お店が地下にあることもあり、階段を降りるのには少し勇気がいるかもしれませんが、思い切ってお店に入ってみたら、何となく優しい雰囲気の空間に沢山のベーグルが並べてあり、可愛い店員さんが働いていてワクワクする……。そんな雰囲気のお店を続けられたらいいなと思っています。

テコナベーグルワークス 代々木上原 代々木八幡 小林智絵

ベーグルを通して、日常の愛おしさに気づく

特別感のあるケーキを作りながらパティシエとしての経験を積みながら、ベーグルを日常食として普及するために経営も担うベーグル職人へ転身して、人気店としてベーグルの魅力を多くの人に伝え続けている小林さん。

代々木公園・八幡駅前の商店街のメインストリートからは外れた小道の一角にあるビルの地下を降りると、丸々としたベーグルたちが迎えてくれる「テコナベーグルワークス」。その小さなお店には、ガラス張りの窓から明るい日差しが挿しこみ、温かい雰囲気が漂っていて、まるでおとぎの国に来たかのような気分になります。

「今日はどんなベーグルがあるかな?」とワクワクしながらお店に通ってみると、毎日が “一期一会”。何気ない日々が愛しいことに気づくかもしれません。

テコナベーグルワークス
住所:東京都渋谷区富ヶ谷1-51-12 代々木公園ハウスB102
TEL/ FAX:03-6416-8122
営業時間:11:00~18:30(売り切れ次第閉店)
定休日:不定休

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