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日豪の文化的な架け橋になれたら。富ヶ谷にある話題のセレクトショップ「JAU」のソニー・マイさんに聞く、オーストラリアデザインの魅力

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最近、セレクトショップやスペースで開催され、感度の高い人の間で話題のエシカル系ポップアップがあります。企画しているのは、富ヶ谷にあるセレクトショップ「JAU」。

JAUは、2021年にオープンした日本初のオーストラリアデザインのセレクトショップ。オーストラリア発のサスティナブルなプロダクトを通じて、オーストラリアのデザインとライフスタイルを紹介しています。今回は街の気になる人として、JAUを立ち上げたソニー・マイさんを訪ねました。

オーストラリアを体感できる、フレンドリーな空間

お店のある富ヶ谷二丁目は閑静な住宅街。周辺には大学キャンパスや大使館が多く、仲間と会話を楽しみながら通学通勤する人の姿も。ポップアップが開催される人通りの多い街とはまた違うのんびりとした雰囲気です。

木の温もりある壁にカラフルなインテリアが並ぶ店内でご挨拶を。と、次の一言に「ワインとコーヒー、どちらが良い?」と聞いて、コーヒーを淹れてくださるソニーさん。

オーストラリア人は普段からリラックスしてフレンドリー。このお店ではそんな一面を伝えられたらと思って、オーストラリアの音楽を聴きながら、ワインやコーヒーを交えて話せる空間にしているんだ。そうすることで新しいビジネスアイデアを思いつくこともあるしね。それがとてもJAUらしいなと思っているんだ」

急かされずリラックスできる空間にしたいという思いから、混雑のない落ち着いた富ヶ谷を選んだそう。金・土・日曜日は一般の方向けに、月曜日から木曜日は百貨店などの取引先向けのショーケースとして開店しています。初対面の方との商談もこの空間で話すとビジネスを越えてプライベートな話題になることも。お酒を交えて、最後はみんなで恋愛相談に耳を傾けていたこともあったそう!穏やかで心優しいソニーさんの人柄を映し、お店は訪れる人にとって心から寛げる場所になっているようです。

移住を決意した、3ヶ月の日本滞在

ベトナム系オーストラリア人の両親の元、シドニーで生まれ育ったソニーさん。8年前の2016年に日本に移住しました。

「日本に興味を持ったのは、盆栽などの日本のカルチャーが好きだった叔父の影響だったんだ。シガー・ロスが出演するフジロックフェスティバルを目的に初めて日本に。イベントやギャラリーなどで展覧会がたくさん開催されていて、東京のクリエイティブなシーンの多さに驚いたよ」

来日してソニーさんが一番感銘を受けたのが、日本のデザイン。長時間にわたり心を込めて作る工程や、職人の技術に、感謝や感動を覚えたと言います。インスピレーションを受けて、自分も挑戦しようと宮大工の建具や、盆栽を学ぶ講座を受けたり、本を読んで勉強したそう。3ヶ月の滞在で移住を決意。オーストラリアに帰国してすぐにワーキングホリデーのビザを取得し、数週間後には日本に戻っていたというから、その情熱や勢いに驚きます。

ソニーさんが伝えたい、オーストラリアデザインの魅力

知り合いもいない、言葉も違う国に暮らす不安もあるけれど、人生は短く、心地良い環境を離れる挑戦も必要だと感じた、とソニーさん。オーストラリアを離れたことが自国の魅力に気付くきっかけになったと言います。

「移住した当初は、日本のデザインをオーストラリアに紹介するビジネスも考えたんだ。でも、自分の生まれ育った文化を離れたことで、改めてオーストラリアのデザインの美しさや背景に気づいて。オーストラリアと聞くと、コアラやカンガルーなどの動物や美しいビーチなどを連想すると思うけど、意外と知られていないオーストラリアのクリエイティブな文化を日本に紹介したいと思ったんだ」

確かにオーストラリアと聞くと、エアーズロックを始めとした大自然が思い浮かびます。オーストラリアのデザインにはどんな特徴があるのでしょうか。

「オーストラリアは白人が多いと思うかもしれないけど、移民が多い国。その影響でオーストラリアのデザインは異なる文化のインスピレーションが混ざり合って、使う素材など表現方法が多種多様なんだ。北欧のように共通するデザインテイストがあるわけではないから定義やイメージするのが難しいね。国の歴史も長くないし、デザイナーのコミュニティもまだ小さいから、自由で面白いよ!」

オーストラリアのデザイナーは自然から多くの影響を受け、環境への配慮が作品の根底にあるとソニーさん。政府の制度で自然が守られ、自然を身近に感じられることが環境への意識を高めていると語ります。

「例えば、オーストラリアでは道路を作る時に道路脇に植える木の最低本数が細かく決まっているんだ。だからシドニーのような大きな都市でも、高層ビルの近くに国立公園や動物園があるし、フェリーに乗れば20分もかからずにビーチに行けるんだよ。

また、シドニーでは自宅の木を切る場合は自治体に許可を得なければならないんだ。だからオーストラリア人は自分の判断で自然を壊してはいけないという意識が小さい頃から芽生えているね。自然の恩恵を身近に感じているから、デザイナーたちは新しいものを作るときに環境に与える影響を深く考えるんだと思う。彼らは制作過程や素材、実用性、そして使われなくなる末路まで考えていることが多いよ」

シドニーの個性的で洗練されたお店の多い街Surry Hills(サリーヒルズ)の並木道。ジャカランダの花が満開に。都会でも自然豊かで、心安らぐオーストラリアらしい風景。

タイムレスに使える、JAUの人気アイテムを紹介

JAUで扱っているブランドは、全てソニーさんが見つけて口説いてきたもの。展示会に行ったり、取引しているデザイナーからの紹介で見つけているそう。

「扱う商品のセレクトは、トレンドにとらわれず、時間をかけて使い続けられるかを大事にしているよ。その商品を持つことで、ゴミを減らせるという役割や責任が生じて、買って終わらない、先へつながる視点があるかを意識しているね」

今回は、数ある中から気になったアイテムをご紹介します。

01, SELJAKのブランケット ¥42,900

ソニーさんが見せてくれたのが、アップサイクルという手法で作られたブランケット。使い終わったブランケットやセーターなどを編み直して作られている、JAUの人気商品の一つ。端材を活用しているため、同じ商品でも仕様が異なることもあるそうで、自分好みの一枚を選ぶ楽しみがあります。

 

02,Champ Coのコースター ¥4,400

使用されなくなった飛行機のタイヤで作られたコースター。高温や凍結が起こる世界各国の滑走路を耐えたタイヤは、卓上でも活躍してくれます。一枚ならグラスに、何枚か集めて大皿にと、パーツを組み合わせて形を変えられる遊び心もたまらない一品。編集部スタッフも取材で惚れ込み、お買い上げしました。

 

03,Posieのソイキャンドル 250g/¥5,830

JAUには、お香やキャンドルなどの香りのアイテムも多数揃っています。どれも制作背景や手法が違うので比較する楽しみがありますよ!迷ったら瓶入りで使いやすい、Posieのソイキャンドルがおすすめ。デザイナーが旅で自然の偉大さに気付き、その記憶を形にするために制作したそう。フローラルなUMEは春の京都に咲く梅の木を、シダーウッド香るSURはカリフォルニアの海岸を連想させます。香って世界各地を感じられるなんて素敵すぎる!

 

04,KeepCup

JAUで人気なのが、KeepCupという再利用できるコーヒーカップ。日本での知名度はまだ低いですが、世界65ヶ国以上で使用され、オーストラリア、ヨーロッパ、北米では誰もがその名を知るブランドです。


カラフルでポップなデザインがかわいいKeepCup。本体はカップとボトルの2タイプがあり、キャップやバンドを合わせて、自分好みのカラーリングにアレンジできます。思わず手を伸ばしたくなる棚はソニーさんの手作り!

「オーストラリアでは、毎朝、同僚や友人とコーヒーを飲む習慣があるんだ。1日にコーヒーを何杯も飲むから、たくさんの使い捨てカップのゴミが出てしまう。そんなゴミを減らすために“コーヒーカップをキープして、また使おう”というアイディアを形にしたのがKeepCupなんだ。KeepCupもJAUもお金を儲けることよりもサスティナビリティの意識を高めたいという考え方が合致して、僕らが正規販売店として日本でKeepCupを広める活動をしているよ」


KeepCupはソニーさんも愛用中!愛用しているのは、keepcupのボトルシリーズ。ボトルの真ん中を分解できるので、氷やドリンクが入れやすい便利なデザイン。

KeepCupが登場した2008年は、今ほど環境やサスティナブルへの関心は高くなかったそう。KeepCupの認知が広まることで、オーストラリア人のライフスタイルに変化が起きたキーアイテムです。

日豪それぞれの魅力を知るソニーさん、これから挑戦したいこと

「僕の目標は日本とオーストラリアの文化的な架け橋になること。その思いを込めて、店名をJAU(Japan Australia United)にしたんだ。今後は、日本の職人とオーストラリアのデザイナーでコラボレーションの作品を作れたらいいなと思っているよ。日本とオーストラリアの異なる文化を融合することで、きっと素晴らしいものができると思うんだ」

オーストラリアの魅力を伝えるためのソニーさんの挑戦は続きます。JAU企画のポップアップは2024年も多数展開予定とのこと。取引先との大型の企画も走らせつつ、気づいたことがあればすぐに自らアップデートするソニーさん。オーストラリアのダイナミックでエネルギッシュな魅力をより伝えられたらと、先日JAUのロゴをデザインし直しました。

ロゴの3文字の配置はオーストラリア大陸の形をイメージしたそう!

他にもカタログを自分でデザインしたり、店内やポップアップで使用する棚や照明などを一から作ることも。「デザインもDIYも専門的に勉強したわけじゃないよ」と謙虚に言うけれど、クリエイティブマインドが高く、なければ自分で作ろうとするフレキシブルな発想がソニーさんらしい。

強度を高めるためにソニーさんがDIYした棚やライティング。「どれも同じでつまらないから」とエアコンも改造するなど、オリジナリティあふれる店内。

「ソニーらしいDIYと言えば…!」と取材に同席してくださったJAUのスタッフが、怪我を負った鳩のためにソニーさんが車椅子を手作りしたエピソードを教えてくれました。「鳩?車椅子?」と聞いただけでは想像付かなかったけれど、写真を見せてもらったら、不織布のマスクやタイヤのパーツなど、身近なものを組み合わせた乗り物でした。あるものを工夫して作るアップサイクルに近い発想を体現するソニーさん。オーストラリア人の動物や自然への愛と感謝をひしひしと感じました。


車椅子の鳩のラッキーちゃん。残念ながらもう飛べないそうですが、車椅子のおかげで元気に動き回っているそう。今はソニーさんのお母さんとシドニーで暮らしています。

8年前に単身で日本に移住して、オーストラリアのデザインの魅力や、環境への配慮の必要性を伝えてきたソニーさん。真摯な思いへの共感が渦のように広がり、多くの人や企業を巻き込んできました。きっとその規模は2024年も大きくなることでしょう。

気になった方はぜひJAUの富ヶ谷の店舗に足を運んでみてください。穏やかで温かいソニーさんやJAUのスタッフ、そしてタイムレスに使えるデザインにきっと魅了されるはずですよ。

 

JAU Shop – Tomigaya

【住所】〒151-0063 東京都渋谷区富ヶ谷 2-12-18
【営業日時】金、土、日曜日 12:00-19:00 
【WEB】 HP /Instagram

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