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富ヶ谷・代々木公園をパン好きの聖地に変えた「365日」。オーナーシェフ杉窪章匡が見つめる「全方位サステナブル」な世界とは?

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遠方からも電車に乗ってわざわざ訪れたくなるお店が多い富ヶ谷・代々木公園エリア。この街で、美味しそうなパンが入った透明のビニール袋を持っている人たちをよく見かけませんか? しかも、毎日、朝早くから夜まで。

365日 パン 代々木公園 富ヶ谷

それは、代々木公園の街をパン好きの聖地と化した「365日」のビニール袋でしょう。行列の絶えないパン屋さん、「365日」は、ちょうど今年12月12日に6周年を迎えたばかり。なぜこんなにも圧倒的な支持を受けているのか……。

ということで「365日」のオーナーシェフ、杉窪章匡(すぎくぼ・あきまさ)さんにお話をお伺いして、その魅力を探ってみました。

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パンと公園って、すごく相性がいい

――代々木公園エリアに「365日」を開店したきっかけはなんだったのでしょう?

代々木公園エリアは、もともと僕が東京で一番長い間住んでる馴染みの深い街。フランスでパティシエの修行をして帰国後、神戸をはじめあちこち移り住みましたが、独立前に働いていたお店が表参道にあったのでこの街に住みはじめたんです。かれこれ10年以上経ちました。

そして決め手は、やはり代々木公園。パンと公園ってすごく相性がいいんです。平日でも人が沢山いる。パンなら持ち運んで手軽に公園のベンチで食べられるし、太陽の下で緑に囲まれて食べるパンは格別の美味しさがありますよね。

それからこの街は感度が高い人が多いので、まさにプロダクトアウト・マーケットイン。作りたいものが決まっていて、それを受け入れられる人がたくさん存在するのは、ビジネス面でも理想的な街でした。

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料理はすべて「化学変化」、それはお菓子もパンも同じ

――杉窪さんは、もともとフランスで修行経験もあるパティシエ。なぜパン職人に転向したんでしょう?

パティシエからパン職人に転向したつもりは全くなくて、延長線上にある感じです。基本的にすべての料理は「化学変化」で成り立っていて、感覚的に美味しいものを作ることが重要。お菓子もパンもゴールや手法は同じで、使う材料が違うだけだから、別ジャンルだとはおもっていません。だから僕は料理もしますし、コーヒーロースターもやっています。

「ひとつのコトを選択しないといけない」という固定観念を持たれる人も多いかもしれませんが、僕はひとつだけだと飽きてしまって、全部やらないと満たされない性格。だからパンを選んだつもりはないんです。実際に、来年は新たにコーヒーショップを三軒茶屋と二子玉川にオープンしますよ。

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ブラック企業が多い飲食業界を、ホワイト化したかった

2013年に独立してこの店を開くにあたって、まずはブラックな企業が多いといわれている飲食業界をホワイト化したかったんです。

それから僕は添加物や香料が苦手で、人工的な味を受つけない。それらを使わず、いい材料を用いながらすべて手作り、なおかつ会社をホワイト化するのが僕の絶対条件と考えたとき、一番早くにゴールに到達できそうなものがお菓子よりもパンでした。

365日 パン 代々木公園 富ヶ谷 杉窪章匡

サステナブル、“持続可能な”環境と関係性を大切に

――フランスで修行した経験が、今でも活かされていることはなんでしょう?

フランスでは、ガストロノミー(食事・料理と文化の関係を考察すること)を追求しながらも、労働環境はすごくよかった。フランスで他国の人たちといろいろと話していると、「日本だけがちょっとおかしい」ということに気づきました。

「サービス残業」って、日本の職場にしかしないらしいんです。先進国だけじゃなく後進国の人たちからも「なんで日本人はサービス残業をするの?」と言われました。個人的な意見ですが、「カミカゼ特攻隊」や「ハラキリ」という歴史的な言葉があるように「自分が犠牲になれば誰かが助かる」という日本人特有の価値観が、労働環境では悪用されているような気がします。

最近よく、社会は「サステナブル」なことが大事っていうじゃないですか。でも実情は、飲食業や農家の労働環境は全然サステナブルじゃない。だから、本当の意味での持続可能なビジネスがしたいと思いました。僕の会社では、完全週休2日制、もちろん雇用契約書や36協定(時間外・休日労働に関する協定)も結んで労働環境もクリアにしています。

また、提携しているオーガニックや自然農法の契約農家さんたちとも、サステナブルな関係を築いています。農家さんたちが安定して毎年作付けできるように、具材は出来合いのものを使うのではなく、必ず農家さんたちが生産した食材を使って手作りしています。

365日 パン 代々木公園 富ヶ谷 杉窪章匡

リピートするものをちゃんと作る

――毎日並んで買いに来てくれる、お客さんに対して考えていることはありますか?

お客さんにとっては、「オーガニック」や「安全な材料を使っている」ことは二の次だとおもうんです。僕らは安心で安全な材料を使って提供したいという気持ちが強いですが、お客さんはそれよりも「美味しいもの」を望んでいる。身体にはいいけど、美味しくないと食べ続けられない。だから美味しいもので「誰と食べるか」というシーンも考えて作っています。

そして「売れるパンはなにか?」というと、リピートされている商品なんです。リピートしないお店は、売り上げは上がりません。だから、基本的には地元のお客さんに好まれるようなパン作りを心がけています。ここは、浅草みたいにインバウンドは相手にできないエリア。だからリピートされる商品をちゃんと作るようにしています。

理論で作るパン

――朝から夜まで絶えることなく売れる「365日」のパンたち。その中でも1番売れている商品はなんでしょう?

最も人気なのは「クロッカンショコラ」ですね。このパンは、1度も試食せずにオープン前日ギリギリのタイミングで作った商品ですが、実は作っているときから「これは絶対にヒットする!」と確信していたんです。

365日 パン 代々木公園 富ヶ谷 杉窪章匡

「味覚」って個人差があって、好みだとおもっている人が多いですが、そうではなくて正確には「感知する能力」に差があるんです。だから絶対音感と同じように人には「絶対味覚」が備わっていて、優れている人とそうでない人では「美味しい」のジャッジが変わる。

でも「食感」だけは誰にでもわかる。食の好き嫌いや「美味しい」という基準は人それぞれでも、食感はみんな同じように感じるものです。だからサクサク、モチモチなどの食感を大事にしています。そうやって「365日」のすべてのパンはイメージで作るんじゃなくて、しっかり理論を組み立てて作っています。

365日 パン 代々木公園 富ヶ谷 杉窪章匡「レモンミルクフランス」もクロッカンショコラ同様に、サクサクした食感がやみつきになって大人気!

365日 パン 代々木公園 富ヶ谷 杉窪章匡
ちなみに、杉窪さんおすすめは「白こしあん×あんぱん」。こし餡の作りかたも独自の手法で、滑らかな食感はまさに唯一無二の味。

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食パンやバゲットは、他店よりも小さめ。「余ったら毎日食べなきゃ」という気持ちにならず、いつも新鮮な状態で食べて欲しい、そんな想いが反映されているんだそう。

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パンだけでなく、美味しくて身体に優しい厳選された食材や食品も購入できる。

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一般のスーパーでは手に入れることができない、自然農法でつくられた新鮮な野菜も。産地や農園の名前もしっかり明記されていて安心。

365日 パン 代々木公園 富ヶ谷 杉窪章匡
パンの包装紙や、オリジナルバッグのデザインも手がける作家さんの絵本も販売。温かみとユーモアのある作品。

365日 パン 代々木公園 富ヶ谷 杉窪章匡
パンに小振りでかわいい紅茶も添えて、ギフトに贈ると喜ばれること間違いなし。

ひとつのことを極めるために、全方位から攻める

――来年は、新規3店舗をオープンし、計200坪と大規模展開するという杉窪さん。今後の野望はいかに?

僕は線を引かないのが長所。周りからは「パンの人」として知られているけど、自分の可能性に蓋をしたくないんです。来年は大規模な店舗展開を行いますが、それ以降はレストランも開きたいし、多摩に自社農園を持って、オーガニックで小麦や野菜も生産していきます。

ひとつのことを極めるために、一方向から攻める人が多いけど、全方位的にから攻めた方がいいんです。例えば小麦についてだと、パン屋さんが小麦に一番詳しいかもしれないけど、料理人とお菓子屋さんの小麦に対するアプローチは違う。いろんな視点ややり方を知った方が、自分の本職に活かせますよ!

365日 パン 代々木公園 富ヶ谷 杉窪章匡

サステナブルな「美味しい」は、みんなをハッピーにする

「365日」という店名のとおり、年末年始も営業していて定休日はうるう年の2月29日のみ。そして、仕事帰りで遅い時間に来店した人も欲しいパンが買えるように、1日に何度もパンを焼き続けている。

行列ができても「売り切れ」ることがなく、毎日美味しいパンが食べられる!

「365日」のオーナーシェフ杉窪さんは、「美味しい、身体にやさしい」を追求しながら、お店に足を運んでパンを食べるお客さんだけでなく、お店で働くスタッフや提携している農家の人たちとサステナブル(持続可能な)関係を築いている、まさに「365日」という店名にピッタリな哲学と理論を持っている方でした。

今回の取材で、人気のパン屋さんのことを探っていったら、「自分自身と、そして周りにいる人たちと、どうやったらハッピーな関係を続けていけるのか?」を教えてもらえました。

私も、今すぐ代々木公園に出かけて、大切な人と一緒に美味しいパンをほおばりたい…!

 

365日
住所:東京都渋谷区富ヶ谷1-6-12
営業時間: 7:00 〜 19:00
定休日:2月29日
TEL:03-6804-7357
URL:http://ultrakitchen.jp/
SNS:facebook Instagram

 

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